キルケが言うことには

Yu Akahoshi.ゼロテラの代表社員/脚本家・演出家

『皇宮陰陽師アノハ』終演のご挨拶+創作過程のメモ。【長文】

皆様こんにちは。赤星です。

 

大変遅ればせながら

先日無事、レティクル東京座 N<ニュートラル>エンタメ公演『皇宮陰陽師アノハ』が終演致しました。

先日っていっても約一ヶ月以上前…ヒェッ……ちょっとこの一ヶ月忙しくて…やっとブログが書けたでござる。

ご来場してくださった皆様、Twitterで応援してくださった皆様、そして関係者の皆様、誠にありがとうございました。

 

楽しかったねー、皇宮陰陽師アノハ。

 

無事終演したということで、毎回恒例?

『皇宮陰陽師アノハ』創作過程におけるメモ的なものを長文でずら~~っと書いていきます。です。

色々つらつらと書いていきますが、作品は作者の手を離れた時点で読者(観客)のもの。作者が書いたものが公式・絶対の正解になってしまうという事実はありますが…どうぞそこはもういっそ、気にせず。皆さんが自由に『皇宮陰陽師アノハ』を思い描いてくれればいいと作者的には思います。

以下に書くことはあくまで「私はこう考えて書いてました」ってだけのことなので、ふーん、そうなんだー程度に読んで頂けると!

以下、色々がんがんネタバレ含んで書いてます。

話があっちに行ったりこっちに行ったり。ご注意!

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公演パンフレットにも少し書かせて頂きましたが

『皇宮陰陽師アノハ』のテーマ・モチーフは「喪失(そうしつ)」。

 

ここ最近、自分自身色々なものを失くしてしまったもので。

色々なものを失くしてしまったついでに、ぶっちゃけこの公演の企画を最初に考えた時は「もう劇団もやめようかなぁ」とか思ってました。まぁ企画が立ち上がって皆さんの元に公演の情報を公開する段階では、そんな気持ちは消え失せてましたが。

まぁ特段何があったってワケでもなく、昔からの癖なんですよね。作ったものは壊したくなる。得たものは捨てたくなる。培ったものは全て無にしたくなる。ゼロの状態になりたくなる。ゼロの状態になったところで自分自身が何か別のものに変わるワケではないのに。

定期的に劇団も演劇自体も辞めてぇ~ってなります。でも演劇は楽しいので、いつも辞めてぇ~やっぱ辞めたくねぇ~のせめぎ合いです。だって辞めたって、悲しむ人もきっと居てくれるだろうけど、この地球からの視点で考えると私が辞めたところでそれは些細なことだものな。世界は何も変わらない。地球視点で物事を考えるなって話だけど。

 

でもやっぱアノハの稽古は楽しかったです。本番も楽しかったし。

私は演劇を始めた時からよく人に「諦められてしまう」ことが多くて、それは自分の演劇への理想が高いってのもあるだろうし、自分の演劇や創作に対する感覚があまり人から理解されづらいというのもあると思う。昔から、目指しているものが分からないとか、逆に目指しているものは分かるけど自分はそこには行けないとか、行きたくないとか思われがちというか。誰かが自分について来るのを、諦めた瞬間や、萎縮してしまう瞬間ってのは、不思議なことに表情や行動で何を言われずとも分かってしまうものです。まぁ、時には言葉でそのまま言われてしまいますが。

そういうことの積み重ねで、自分は誰にも理解されず誰にも協力してもらえないんじゃないか。と思うことがよくあります。でも作り続けたいんです。だって、自分の中からどんどん演劇が湧いて来るから。

そうこうしているうちに、今では理解者も協力者も、かなり多くなったと思います。演劇始めた時は理解者も協力者もゼロに等しくて。そう思うと、今は随分恵まれた環境に居ます。

「諦められてしまう」ことに慣れ過ぎて、なんだか虚しい気持ちで演劇をやっていたっちゃやっていたのですが、アノハのキャストは全然諦めなかった。ガッツリ喰らい付いてくれた。それが楽しかったし、なんか燃えたね。心の底から、楽しめたんです、アノハを作るの。それが良かった。同時に腑抜けてた心が引き締まった気がしますね。もっと上に行きたいと思った。もっと立派な脚本家とか演出家になりたいと思った。主宰業もね。

 

私は結構「不言実行」とか「沈黙は金」って言葉が好きで、何も言わずにやることやった方がカッケーじゃんとか思ってしまうんですが、反面やっぱり何考えてるのか分からんとか、あまり上手く自分の気持ちとか他人に伝わってないことが多いので、最近は色々頑張って言葉にして伝えようと思ってます。まぁ、言葉にしても伝わらないことはあるし、言葉にしたことで誤解させることも多いんだけどね。特に、僕らの立場の言葉ってのは、よくもわるくもチカラを持ち過ぎますから。喋れば余計な争いを生むことも多々ある、だから喋りたくない。でも喋らなくても知らない所で余計な争いを生んだりしてますからね、存在してるだけで争いは生まれるってこと。業だね。

まぁだから公演に際して~とか、今何考えてるとか、文章にすべきではないのではとも思うのですが、今の自分を世界に発信するのも自分にとっては大事なのかもしれない。とかも考えます。危ういけどね。沈黙は金。でも作家とか演出家だから、自分は。沈黙しないことが金になる時もあるのかな、とかも思います。自分に都合の良い解釈ばっかだけど。

 

 

今作のキャッチコピー。

「星は墜つ、君を残して。」

 

実はめずらしく色々悩みました。

他の候補は

・星は墜つ、灯火のその先へ

・人間であるということ。

・神とは何か?

 とか。

 

最初に浮かんだのが「星は墜つ、君を残して。」という文章で

でもなんだかショッキングな文章だし…と思い色々考えたけど、やっぱり最初のインパクトを大事にしました。公演の方向性の決定というか。星の末路を飾る。

作品そのもののテーマでもあるし、あの時の劇団そのもののテーマでもあったし、なんか自分自身(赤星ユウ)を示した言葉でもあったかも。

私は此処で終わってもよかったんだよ。ていう。此処で、というより、私はいつ物事が終わってもいいと思ってる節が昔からあるし、自分に終わりが来ることを特別なことではないと思っている。今だって、理解者や協力者が現れてくれたけど、それがいつまで続くかはわからないし、演劇をやる上である程度のドン底は経験してきて、今はドン底から脱してるけど、またいつドン底に戻るかは分からないし、ドン底のさらに下に行くことだって全然あり得る。そしてそれを私は恐怖だと思っていない。いつだって自分の身に振り掛かってもおかしくないことだと思ってる。

自分が居なくなるイメージ、劇団が無くなるイメージってのは、それを始めた頃から常にある。そうなってほしくはないと思って尽力するけど。栄えれば廃れますからね。まぁ現在の救いは、ゆーてまだ栄えてないってことです。まだ山登りの最中ってことです。我々は頂上を目指してガンガン進むけど、頂上を見つけてしまった時が最大の不幸だろうね。あとは墜ちるしかないもの。

星は墜つとか書いたし、此処で終わってもよかったんだよ。とか思ってるけど、でも反面、全然ここはまだ墜ちるポイントじゃないし終わるポイントでもないと思った。

マイナスな文章を書いた時ほど、気分はプラスになりませんか?

逆にプラスの文章を書いた時ほど気分はどんどん落ち込む。

インプット・アウトプットの問題かもしれない。私は明るい作品を書いた時ほど気分は落ち込むし、逆に暗い作品を書いた時ほど気分は明るくなるんです。自分の中の気持ちのアウトプットなのかもね。 まぁ、受け手は、明るい作品観たら気分も明るくなるし、暗い作品観たら気分も暗くなるものだろうけどね。だから基本的に、皆さんと、私の気持ちは、作品ごとにちぐはぐになる。アノハはもう、私はバリバリ明るくテン上げ↑↑でしたよ。ということは皆さんは…。

 

「星は墜つ、君を残して。」って寂しい言葉だけど、寂しさの中にどんよりした絶望じゃなくて、なんか美しい侘しさみたいなのがありませんかね。置いていく情景、置いていかれる情景、どちらも想像できる言葉というか。作品そのものとも密接にリンク出来た気がするし。

キャッチコピーの話は、そんな感じでした!

 

 

そして唐突に皆が知りたがってた?『皇宮陰陽師アノハ』キャラクタァの年齢まとめです~。

自分の中ではこうでした。創作段階のメモ。

年齢順につらつら。

 

?→白虎、六合、酒呑童子、大天狗、野ばら

30代半ば→トガノ

30代前半→山科皇宮護衛官

20代後半→三の葉

20代半ば→大瑠璃陛下、こはる、聖蘭、片喰

20代前半→不破ウシオ、セツ、鹿城サク、五条シズク、サギリ

10代後半→安倍アノハ、朱鷺皇子、蘆屋ホクト、はつね、飛良

10代半ば→なでしこ、きらら皇女、チガヤ

10代前半→レキ、美琴、美鈴

 

ざっくり!

同じ年代の枠組みの中の上下は…自由に妄想してください。笑

この表からわかることを一つあげるとすれば、片喰が留年してるってことです。でもきっとわざと留年してるんだと思います。1~2単位とか残して。

 

あとは、キャラクタァの名前の由来とか。

 

●不破ウシオ…不破は友達の名字を借りました。ウシオは潮(うしお)。メイン三人のうちの海担当だから、海にちなんだ名前を。

●安倍アノハ…安倍はあの超有名な陰陽師から。アノハは作中でも語られてたけど、あの葉=イチョウ。銀杏の花言葉は「鎮魂」「長寿」「荘厳」メイン三人のうちの大地担当。

●大瑠璃陛下…オオルリという青い小鳥から。色鮮やかで美しい鳥ですよ、可愛い。メイン三人のうちの空担当。

●朱鷺皇子…朱鷺(とき)の別の読み方がシュロ。オオルリと対になる赤い鳥。絶滅する鳥、人工飼育の環境下で辛うじて生き残っている鳥。

●蘆屋ホクト…蘆屋はあの超有名な陰陽師から。ホクトは北斗七星。ナナセって偽名もここから。

●白虎&六合&酒呑童子&大天狗…妖怪とか化け物とか神様とかの名前から。一番現存する資料が少ないのが六合。他は結構残されてる言い伝えとか通りにキャラ付けしたけど、六合はかなりオリジナリティが入っている。

●野ばら…茨木童子→茨(いばら)っていうのと、シューベルトの『野ばら』と。野ばらは童謡で一番好きな歌だ。野ばらの花言葉は「痛みから立ち上がる」=羅生門は倒壊と再建を繰り返す。羅生門の鬼と同一視される茨木童子。また別の花言葉「純朴な愛」「孤独」など相反するものを併せ持つ中庸、ニュートラルな存在。

●なでしこ…可愛らしい可憐な花。撫子の花言葉は「純粋な愛」。

●セツ…雪。大瑠璃と同じく、空から来るもの。青系統の色を想定するもの。

●三の葉…三つ葉のクローバーの花言葉は「信仰」。

●トガノ…咎(とが)。一人の人間の生命を代償に地獄から舞い戻った大瑠璃陛下は一生、咎を背負う。

●レキ…歴(れき)。代々続く聖職者の誇りと意志。

●山科皇宮護衛官長…京都の地名より。シンプル~。

●五条シズク…レティクル東京座の作品に地味に登場する名門・条の字一族の五条担当。シズクは雫。ウシオと一緒の、水関係の名前。

●鹿城サク…カシロは化する(=変化する)の命令形、化しろの当て字。発音は違う。サクは朔=新月

●きらら皇女…雲母、鉱物より。キラキラ。

●美琴&美鈴…琴と鈴、楽器にちなんだ名前に、お揃いの美の字。

●はつね&こはる…初音と小春。どちらも春にちなんだ名前。ウシオに春を運ぶ存在。春…出会いの季節でもあり別れの季節でもある。

●聖蘭…アングレカム・セスキペダレ(別名:スイセイラン)という蘭から。花言葉は「祈り」。

●チガヤ…茅(ちがや)という雑草より。そこら辺に生えている、親しみある雑草。普遍的な子供の象徴。

●片喰…片喰紋(かたばみもん)という家紋より。家紋の元ネタの片喰という植物は、一度根付けば何度でも新しい芽を出す。転じて、たとえ片喰という個人が死んだとしても、彼の遺志はこの後の世界で何度も受け継がれていくという暗示。學生組の大地担当。

●サギリ…狭霧(さぎり)より。あと万葉集の「まそ鏡 照るべき月を 白栲(しろたへ)の 雲か隠せる 天(あま)つ霧かも」が鹿城兄妹の元ネタ。輝く筈の月が見えないのは雲が隠してるのかしら、霧が隠してるのかしら。みたいな。サク(月)とサギリ(霧)で呼応する。學生組の空担当。

●飛良…ヒラという魚が元ネタ。漢字は当て字。學生組の海担当。

 

そしてそして、ここで今作の衣裳原案(作成:赤星ユウ)を公開します。

何気に今作では初公開なんじゃないか?

衣裳原案とは、企画のわりと最初の方に赤星から衣裳さんやメイクさんに提出するキャラクタァのイメージ資料です。このキャラクタァの衣裳・メイクのイメージカラーはこんな感じで、本編ではこういう立ち位置を予定していて、本編の展開はざっくりこんな感じになります。みたいなものを絵と文章で説明してます。

これを元に、衣裳さんやメイクさんがデザインしてくださいます。結果、皆さんが観た本編のキャラクタァの外見になっていくのですね。

なので各キャラクタァのプロトタイプ的に楽しんで頂けると。沢山の人間の手で作っていく演劇ならではのデザインの変化をお楽しみください。

かなりゴチャゴチャと色々書いてるので、見辛くてすまない。本当に本当の初期に書いてる図なので、本編と違う箇所も。頭の中の混沌を覗き観てください。

 

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ちなみに、衣裳の杉澤香織さんが描いた衣裳案も公演HPにて掲載してます!

http://reticletkz.jp/anoha/costume/

これと見比べると、どうデザインが変わっていったのかとか分かりやすいかも。

特に主人公のアノハのデザインはガッツリ変わってますね。

あとはヘアメイクとかも結構変わってます。デザインは林美由紀さん。

コチラはキャストページを見て頂くと分かりやすいかも!

http://reticletkz.jp/anoha/cast/

 

キャラクタァの造形を様々な角度からお楽しみください!

 

 

そして、以下、色々メモ~。ざっくり。

 

●宗教都市の元ネタ

場所自体は京都と銘打ってますが、中身は実は、日本唯一の宗教都市・奈良県天理市をモチーフとしてます。宗教が特別なものではなく、日常の一部となっている都市。宗教によって均整を保つ都市。実際に訪れました。不可思議で、美しい街でしたよ。「全ての人がかえる場所」らしいです。同じ見た目の建物がいくつも立ち並ぶ。遠くで祈りの声と太鼓の音が常に聴こえてくる。インスピレーションが掻き立てられる街だった。京都から電車で1時間、750円くらいで行けます。

宗教都市・京都の外身は京都、中身は天理市モチーフです。

 

奈良県天理市

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京都府

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●メイクについて

デザイナーの田中ユウコさんが考案し、ヘアメイクの林美由紀さんが実現してくださったのですが、今回は京都がメインの話ということで、普段のレティクル東京座のアイメイクと全然違う種類のメイクになってます。具体的に言うと、TOKYOから来たウシオはいつものレティクル東京座みたいに華美でド派手で目が大きく見える西洋的なメイクだけど、京都の人々のメイクは目が細く見えるような、あっさりとした東洋的なメイク。

ビジュアル撮影の写真が表に出回った段階で普段のレティクル東京座のメイクと違う!と気付いてくれたお客さんも多くて、嬉しかったし気付くのすごいな~と思った。

 

●宗教都市・京都は標準語

「関西弁のキャラが居ない」

これ公演中誰かにつっこまれるかなあ…って思ったけど、つっこまれなかった、よかった。笑

一応、設定がしっかりあります。京都に首都を移した段階で、標準語(東京弁?)が京都のスタンダードになりました。

 

●『皇宮陰陽師アノハ』は『アイドル♂怪盗レオノワール(2017年上演)』と同時代別地域の話、『昴のテルミニロード(2016年上演)』の数百年前の話

↑これが『皇宮陰陽師アノハ』の上演台本のラストに書かれていた「とあること」です。

レオノワールの終演の時から、ずっと言いたかった~。でもアノハ終演まで言えない~遠い~って思ってた。笑

レオノワールであんなに皆楽しそうだったのに、一方その頃京都は!!みたいな感じです。そして数百年後!!みたいな。

レオノワールではシーニー資本によって土地を買収し独立ディストピア社会、ネオ・ナリマスシティを作ったアイドル♂総裁フェイロン=ワンが主人公の獅子丸カナメたちの敵として登場しましたが、実はそれは大局的に見るとそう悪いことでもなかったんだなあ…っていう話。レオノワールの劇中でも少し語りましたが、フェイロンが来るまであの辺りは『國家解体』で荒れ果てた地だったので。TOKYOはア○リカ的な國に支配されてます。だからレオノワールでも純粋な日本人ぽい人って少なかったり、ハーフっぽい人が多かったりしたんですね~。

ちなみに、不破ウシオが住んでた場所は海があるところということで、ネオ・ナリマスシティやイケブクロ・メトロポリスとは離れた場所。不破ウシオがもしネオ・ナリマスシティに住んでたら、そもそも京都に行こうと思わなかったかもしれない…。

 

『皇宮陰陽師アノハ』は、過去の作品、そしてこれからの未来の作品と繋がる部分が多いです。

今作でいうと…

 

★数年前、聖蘭が見た「東の方へ勢いよく飛んでいく巨大な緑色の流れ星」は、フェイロン=ワンの元へ顕現したファントム・アイン(『アイドル♂怪盗レオノワール』より)

偶然それを見た聖蘭は家を捨て民間宗教家になる。ファントム・アイン的にはただ通り過ぎただけなので、全く認知してない。でもあの日ファントム・アインを聖蘭が目撃しなかったら、アノハの結末は違ったものになってたかも。誰かの何気ない行動が、他の誰かの結末を決めてしまう。バタフライ・エフェクト的な。

 

★大瑠璃陛下とセツの子孫が朝霧陛下、宿木親王、なずな(『昴のテルミニロード』より)

あの後、大瑠璃陛下とセツは結婚し、子供を残す。皇族の血は受け継がれ、繋がっていく。咎を背負った大瑠璃の、実の弟を殺して自由と安寧を得たという「業」は子孫に受け継がれ、朝霧陛下は國の傀儡となった挙句に実の弟に殺され、皇族の血は絶え、日本という國は滅びる。

 

★レキは聖職者ジン一族の始祖(『昴のテルミニロード』より)

レキはジンという名字を新たに名乗り、聖職者として生きる。レキの子孫が代々聖職者として皇族に仕えることに。しかし時代と共にレキの教えは歪められ、再び皇族を傀儡にするための手段として宗教は利用される。

 

★東北に追放された大瑠璃陛下の母親は、東北へ何を残す?(いつかのお話)

★海に身を投げて死んだウシオのキョウダイ。海の下には理想郷がある?母たる海が支配する世界(いつかのお話)

★大瑠璃が死んだ時に行(おこな)った「地獄巡り」。大瑠璃は虚無としか感じなかったが、地獄にも世界は広がっている(いつかのお話)

 

などなど。

『アイドル♂怪盗レオノワール』や『昴のテルミニロード』についてはYouTubeに動画が一部アップされてるので見てくれよな!!(ステマ

 

 

 

 

こちらが公演特設サイトだ……。

アイドル♂怪盗レオノワール→http://reticletkz.jp/leonoir/

昴のテルミニロード→ http://reticletkz.jp/termini/

 

過去公演DVDやパンフレット、上演台本が通販でも購入できるゾイ(ステマ)→

http://reticletkz.jp/store/

 

 ●安倍アノハ(皇宮陰陽師)と蘆屋ホクト(民間陰陽師

アノハは正統派な陰陽師、ホクトはトリッキーな陰陽師というイメージがあります。

二人が使う陰陽術も、アノハのは現実世界に実在する呪文(「六根清浄(ろっこんしょうじょう)」とか)。ホクトのは今作にあたり書き下ろしたオリジナルの呪文(「怨、故・伐・戴(おんこばったい)」とか)だったりします。他には劇中でも触れてましたが、お互いに使える術が違ったりします。アノハは泰山府君が使えるけど、ホクトは人を操る外法が使えるとか。

正統派なアノハは陰陽師一本でやってたり、トリッキー・庶民派なホクトは陰陽師以外にもそれらを活かした調合師とか占い師とか色々手を出してたり。

二人の関係は公務員VSフリーランス個人事業主みたいな感じです。

ただ、どれだけ二人の陰陽師スタイルが違えども『式神召喚』という術に関しては古来より変化がないという設定で、なので『式神召喚』に関しては呪文も召喚方法も二人とも一緒のスタイルにしてあります。

ちなみに、アノハが使役する「十二天将(じゅうにてんしょう)」も現実世界に歴史として?文化として?実在してますが、ホクトが使役する「十二悪鬼(じゅうにあっき)」という概念は今作オリジナルです。十二悪鬼のチョイスも、有名な悪っぽい妖怪から選びました。

 

●あの世界における『式神

劇中でも触れてましたが、あの世界での『式神』は『式によって導かれし記号』です。

かつて妖怪・化け物・或いは神と呼ばれたカタチの無い概念は、陰陽師によって調伏されると、『式によって導かれし記号』=『式神』…カタチのある概念に昇華する。

妖怪・化け物・神・或いは『式神』は「合わせ鏡の世界の存在」で、普段の我々が住んでる世界と少しズレた世界線に居る。合わせ鏡の中のように、同じ世界が映し出されてるようで、映し出されただけ無限に広がっていくような世界。

式神』が居るところは「合わせ鏡の世界」の中でも隔離されている場所、という設定です。さらに主ごとに隔離されてるイメージです。召喚前の式神はそこで眠り続け(起動前)、召喚の時を待ってます。陰陽師は、自分専用の「合わせ鏡」を一つ所有している者ってことですね。

基本的に「合わせ鏡の世界」は現実の世界と干渉しないが、時折「合わせ鏡」を越えて不可思議なものたちが現実にやって来る。それを我々が妖怪とか化け物とか神とか呼ぶ。(逆に我々が合わせ鏡の世界に迷い込んでしまう場合も。その場合起きるのが「神隠し」)

式神』は、それらを記号化して、意図的にこちらの世界へ呼べるようにしたもの(偶発的なものではなく、確実なものとして)。それらを可能にしているのが陰陽師とか霊力とか。

だから、陰陽師とか式神とか召喚とか言ってるけど、実はやっていることはかなり電子的というか、コンピューターに近いようなイメージ。

陰陽師(ユーザー)が陰陽術・霊力(プロトコル)を使って式神(プログラム)を合わせ鏡の世界(データ)から召喚(出力)してる。みたいな。パソコン用語詳しくないので正確には違うニュアンスになってるかも…でも分かりやすく言うとアレですよ、預けてるポケモンをパソコンから呼び出してるみたいな感じですね。

アノハやホクトは今は霊力が足りずそれぞれ二体ずつしか顕現できないという設定ですが、設定的には他の十体とも契約は切れておらず、ひたすら「合わせ鏡の世界」で再び呼び出されるのを待っています。契約は血ごとに受け継がれているので、血が絶えた瞬間に全ての契約が切れます。

 

●『野ばら』の存在

それを踏まえた上で劇中に登場した『野ばら』というキャラクタァに触れると。劇中で野ばらが自分自身で「そして我は、ある日突然、その方程式より弾かれしもの」と言ってるのですが、まさにそれ。それ以外に説明のしようがないキャラクタァ。

かつて野ばらは「茨木童子」という妖怪で、酒呑童子の部下でした。

あとこれは絶対に伝わってないし絶対に勘違いさせてると思うんだけど、茨木童子は「十二悪鬼」の一人ではありません。また蘆屋ホクトの式神でもありません。

(劇中でナナセと聞いて「ホクト…蘆屋ホクト!(その偽名の正体知ってるで!)」みたいな反応をしてるのも勘違いの要因だなと思うのですが、あれは京都で知ってることは知ってる・知らないことは知らないみたいな感じ、記憶も自我もその時々で曖昧なので…)

茨木童子は別の誰かを主とし、別の誰かの『式神』でした。

それが何かが起きて、契約を失い、でも元の「茨木童子」という概念に戻ることもなく、ふと気付くと…ワタシはダレ?状態の謎の概念になってしまった。所謂バグです。世界の枠組みから外れてしまった存在。

最初は概念からのスタートだったので実体も何も持ってませんでしたが、徐々に実体を得てきている。という設定で、衣裳も包帯グルグル巻きという様相なのですが、あの包帯の中では徐々に身体が形成されていってるという設定です。劇中ではまだ包帯の中身は空っぽ。野ばらは、多分人間になりたいと願って、徐々に人間に存在を近付けていってるんだと思います。

バグなので、非常に自我も記憶も曖昧な存在ということで、その時々で一人称が違ったり、雰囲気が違ったりといった感じで作ってほしいとキャストの青海さんには伝えました。劇中最後ではウシオに「私は、君がそうだと思うもの。俺が認識したものが君。つまり、僕は僕だ。」と言ってますが、あれは「俺が認識したものが君」でウシオとリンクして、ウシオ視点を強制的に一瞬乗っ取ったりしてるイメージです。すぐまた野ばら側に視点を戻しますが。

概念、というものが、つまり君(自分)がそうだと思うものなので。

そうだと認識したものがその人にとってはソレになる。つまり…みたいな、少し難しい台詞でした。

稽古での思い出で、普段あまり質問とか来ない青海さんがめずらしく寄って来て「この台詞さぁ…そういうこと?概念的な…」みたいなふわっとした質問をして来て、「そう、そういうことだよ」って返して「そうかぁ…そうだよなぁ…」って言って帰っていきました。どういうアクトにするか相当悩んでたみたいで、色々イメージを伝えたのも良い思い出です。アメージングで…ワンダフルな…

 

●「ねじれた化け物」

劇中で朱鷺皇子と従者・三の葉との会話で出てくる「ねじれた化け物」。

 

朱鷺皇子「「ねじれた化け物」は、この世のもの、全てを口の中に入れる。太陽を食べれば、日食が起こった。生きている限り、食べ続けることをやめない、おそろしい化け物。」

三の葉「しかし「最後の審判」の日、「ねじれた化け物」は、その運命から解き放たれる。朱鷺様、あなたの心の飢えもいつか必ず、満たされる日が来ることでせう。」

 

このように二人が語ってますが、「ねじれた化け物」の元ネタは旧約聖書に登場する陸の怪物ベヒモスベヘモット)』と、同じく旧約聖書に登場する海の怪物リヴァイアサンレヴィアタン)』です。 

そもそもこの二つの怪物は別個体でありながらかなり役割だったりが似ていて、同一視もされてる怪物たち。

ベヒモスはこの世のものをひたすら食べ続ける怪物。ただただ食べ続ける。ベヒモスの宿命というか存在意義は、メシア(救世主)が現れた時の宴のメインディッシュだったり、「最後の審判」で生き残った人々の食料になると考えられたり。フォアグラのガチョウのような運命というか。

リヴァイアサンは太陽を食べて日食を起こし、月を食べて月食を起こす怪物。とにかく恐ろしい程強大なチカラを持った化け物で、この地上にリヴァイアサンを支配するものは居ない!とまで言われているけど、最後は神に頭を砕かれて、砂漠の民の食料にされる。

ね、別個体の筈なのにとても似ているでしょ。作中の設定としては、この二つの怪物の話をミックスしたものを、「ねじれた化け物」として語っているといった感じです。二つの別個体の話が「ねじれて」同一個体の話になってる、という意味も込めてます。

 

朱鷺皇子や三の葉が劇中で

 

朱鷺皇子「私は、「ねじれた化け物」?」

三の葉「人は皆、「ねじれた化け物」ですよ。」

 

といった感じでなんとなく示唆していますが、劇中における朱鷺皇子はベヒモスであり、リヴァイアサンです。存在するだけでひたすらあらゆるものを破壊し続け、最後には神(大瑠璃陛下)に殺され、メシアや民の食料(犠牲・糧)になる。「最後の審判」の日、その運命から解放される。つまり、死して生きるものの犠牲・糧となることで、朱鷺皇子は全ての苦しみから解放されるというエンディングを示唆していました。

 

OPで「羽ばたいた鳥は 解放の標(しるべ) 犠牲を伴(ともな)い 繁栄を呼ぶ 時(とき)の呪いを遺(のこ)し」という歌詞があるのですが、ここら辺も大瑠璃陛下と朱鷺皇子という二羽の鳥のことを表現したりしてます。時の呪いは時代の呪いって感じなんですが朱鷺(とき)の呪いと若干掛けたりしてます…こんな所で誰にも理解されないクソ駄洒落を入れてしまった…。大瑠璃にとって朱鷺は呪いですからね。

そう、今作だけじゃないけど、結構「呪い」というものをモチーフにすることが多いです。誰かの言葉や誰かの行動が誰かへの呪いになる的な。幽霊とかではなく、生きている人間の業みたいなイメージに近いです。今作でもいっぱい「呪い」を仕込みました。自分が描く呪いはいつも、マイナスな意味だけを持つとは限らない、といった感じにしてます。そういった視点でレティクル東京座の作品を観てみるとまた違った発見があるかもしれません。

 

朱鷺皇子というキャラクタァは、おそらく観ていて全く理解出来なかったりするキャラクタァだったんじゃないかなと思います。何がしたいの?みたいな。反面、朱鷺皇子と似ている人からしたら、理解は容易だったと思うし、共感しやすかったかも…。

朱鷺はとにかく生まれつき「破壊衝動」だったり「破滅願望」を秘めている人で、それに苛まれてあらゆるものを傷つけ破壊してしまう。自分の感情を抑えきれない人。だから、行動も全然理屈じゃない、衝動的。でもそんな衝動的な自分のこともちゃんと分かってて、あらゆるものが嫌いだけどそんな自分が一番大嫌い。みたいな。

朱鷺皇子みたいな人、よく周りに居ませんか?

 

所謂「架空の物語」を作る時に、キャラクタァはある真っ直ぐな感情を持ち、真っ直ぐにその目的を生きたりすることが多い。たとえ悩んだとしても、それさえも到達地点にキャラを持って行くための必要事項だったりね。そうして物語を作っていると、私はよく「コイツ何がしたいの?」ってキャラを逆に作りたくなる。よりリアルに寄せるために。だって、我々が生きている現実の方が、コイツ何がしたいの?って人、多いじゃないですか。でもそのコイツ何がしたいの?って人も、突き詰めていくと、自分の感情が上手く表現出来なかったり、そもそも自分で自分のことが分からなかったりしているってことに気付く。それって何も特別なことじゃない、よくあることで、リアルだな。って思う。あまり「物語」に登場しないけど。でもそういう特性を持ったキャラクタァを物語に入れることで、物語ってまた違った味わいが出来るんじゃないかなと思ってる。

でも、そういうキャラクタァもきちんと愛されてほしいし、納得してもらいたいし、自然に溶け込ませたい。それには描き方をきちんと丁寧に考えないとだなと、日々研究中です。あと何より演じてくれる方の魅力あってこそです、これは全部のキャラクタァに言えることですが!皆、アノハのキャラクタァを演じてくれてありがとう(ここで言っちゃう) 

 

●所謂「良いシーンだなぁ」ってのを描かないようにしてる

自分が演劇を作るにあたって、善人の善人による善人のためのプラスだけに溢れているシーンってのを、極力作らないようにしてます。というのも、やっぱり色々な意味で「リアル」で在りたいから。描いてるのは何処まで行っても虚構そのものなんですけどね。逆に、マイナスだけに溢れたくもない。「なんとも言えない」シーンを作るのが好きだったりする、観ている方はモヤモヤするかもだけど。

人間のエゴだったり、どうしようもなさだったり、それでも自分を納得させてなんてことないように生きようとしたりする、そういうのが溢れてるシーンが好き。

よく現場で、「私はここのシーン、全然良いシーンだと思って作ってないから!登場人物のエゴに溢れてて、クズみたいなシーンだよ!それを理解して演じてくれ!」って言ってます。「観る人によっては、ここのシーンは良いシーンだなぁ・感動的だなぁと映ると思う。それは一つの正解だし、観たいように観てほしい。でも作ってる側は、このシーンは良いシーンだなぁ・感動的だなぁと思ってはいけない」とも言います。

おそらく、作家・演出家によっては同じシーンを描いても、良いシーン・感動的なシーンにする人も居る。それも一つの正解だし、そういうところに演劇の個性って出ると思う。そんな中で、私はこう描くんだっていうイメージを伝えていくことが、演出家の仕事なのかなとも思います。

 

●その後の世界

あの後、宗教都市・京都の門は再び閉ざされます。

結果として、大瑠璃陛下は自分に歯向かうものを全て排除し、自分を支えるポジションを自分が信頼おけるもののみで固めましたが、それは決して幸せな未来を大瑠璃陛下自身にもたらしません。劇中でも大瑠璃は、嫌なヤツを切り捨てず手元に置き続け、なんとか共存をはかり痛み分けをすることにより調和を為していました。アノハが虐殺すれば…といった提案に対しても「人間の道理を越えてはならない」と言ったり。それは大瑠璃自身、痛み分けで調和を為さないと、必ず今以上に恨みを買ったり報復されたり大義を失ったりすることを理解していたからです。現状維持しつつ、じわじわと有利に物事を進めたかったのです。

でもそれが朱鷺の暴走やホクトの暗躍や民の扇動で不可能になった。結論を出さないといけなくなり、結果として弟を殺し、自分に歯向かうものを全て排除し、残った仲間たちで周りを固めましたが、大瑠璃もウシオもアノハも、それが全く最善の方法ではなく、むしろ大変なことをしてしまったということを理解している。

完成したのは独裁体制で、真の恐怖政治だからです。

大瑠璃と朱鷺の関係は複雑で、朱鷺の最期の瞬間は確かに穏やかな安らぎを感じていたし、大瑠璃と朱鷺の間ではあの結末はお互いに受け入れられ・完成されている世界ですが、大瑠璃が朱鷺を殺した・兄が弟を殺したという事実は決して消えることはなく、後世にまで「クーデターを起こした弟(皇子)を殺害し、クーデターに加担した民を銃殺刑に処し、自らの臣下のみに高い地位を与え世を治めた陛下」という歴史のみが残ります。

それを理解していたウシオは大瑠璃に朱鷺を殺せと言われ実際に殺した時に、「俺の意思で殺したんだ!」と言います。命令されたからやったんじゃない、俺の意思でやったんだ、だからこれは陛下が皇子を…兄が弟を殺したんじゃない。みたいな。自分がかつて経験してしまったキョウダイ殺しの罪を大瑠璃に背負わせたくなかったというのもある。でもそれは朱鷺にはまかり通らないし、朱鷺じゃなかったとしてもまかり通りません。ウシオは大瑠璃に仕える存在ですからね。それに朱鷺はウシオなんか見てなくて大瑠璃だけを見てましたから。結局、ウシオは罪を被るのに失敗したし、そもそも大瑠璃も朱鷺もウシオに罪を被せる気はなく、お互いに罪を分け合うことを選んだので。ただ、皇族なので刀は握らない。実行するのはいつだって、命令される誰かです。若干ニュアンスは変わるけど、絞首台の、ボタンを押して床を抜く人と一緒。

そう考えると、皇族でありながら自分で銃を持ち大瑠璃を撃った朱鷺の愛憎は凄まじいものだったとも思います。

 

とにかく、あの後の世界の未来は暗いです。

そしてこれからの未来を、京都に残った人々は全員理解しています。

でも同時に、それでも立ち向かっていかなくてはいけない、とも理解しています。

だから大瑠璃は去ろうとするウシオを引き留め、ウシオを京都へ残した。

 

『皇宮陰陽師アノハ』の数百年後が『昴のテルミニロード』なので、今後ウシオやアノハや大瑠璃たちが何を残そうとも、全ては滅びに向かっていくワケですが、それでも『昴のテルミニロード』の時代には『皇宮陰陽師アノハ』の登場人物たちは誰も残っていません。当然、みんな自らの人生を終えています。

たとえ滅びに向かっていくとしても、その登場人物たちが生きていた時代までしか世界は認識出来ないということを踏まえると、ウシオやアノハや大瑠璃はあの後精一杯生きて、自分の人生を全うしたかもしれません。「後なんてどうだっていいんだよ、今が一番大切なのに」ってヤツですね。

だからあの世界の未来は暗いけど、それと登場人物たちが幸せだったか不幸せだったかは関係ないというか、そことは完全に切り離された事象だと思います。私たちだってそうでしょ?

だから、皆があの後の世界を自由に想像してくれればいいと思います。いつか公式で続編を書くかもしれないけど。

とりあえず決まっていることは、大瑠璃とセツが結婚して子供を残すこと。皇宮陰陽師の血がいずれ途絶えること。レキの末裔が聖職者としてやがてレキの教えを歪めていくこと。とかとか。あとは多分、あの後の世界で不破ウシオと鹿城サクが大瑠璃陛下に皇宮護衛官として仕えていくけど、あの二人はきっと殺伐とするし、きっと仲が悪いし、結局は不破ウシオが劇中最後に大瑠璃陛下に語った通りの未来になっていく。それでも大瑠璃はウシオを手元に置くことを選んだし、アノハもそれに従う。人生は泥沼だ。それでも時間は流れていくんだ。みたいな。

人生は泥沼だけど、生きているということはそれ以上に何かしら意味を持つものだよね。とも思う。死ねばそこで終わりですから。それでも「死」すら全くの無意味ではない、誰かの死も誰かにとって意味を持つものになる。だからあの世界で無意味だったことなんて何ひとつない。それは我々が生きている現実ですら同じ。

意味のないことなんてない、だからこの世は地獄なんだ。 烙印は君の希望。

 

 

●その他小ネタ

ひたすら長々と語ってしまった!以下は小ネタまとめだよ!

 

・海の下に理想郷があるっていう概念は、安徳天皇(平家)が入水する際の二位尼の「波の下にも都がございます」という言葉が元ネタ。

・蘆屋ホクトのラストの台詞「出ていこうと思えば、いつでも出ていけた。そうしなかったのは、惰性(だせい)。惰性だよ。」は追加された台詞。当初は「さようなら……安倍アノハ。」しかなかった。普段滅多に台詞を追加することはないんだけど、完本して関係者に送付してから、何かしら引っ掛かってて。すぐにそこの一文だけ追記して、初稽古に臨んだ。なんか曖昧な書き方になってしまいますが、直感みたいなものがあったんでしょうね。ここでこの一文を追記することで、この作品は格段に良くなるぞ。みたいな。あんまりうまく言えないんですけどね。

・プロットの当初は実は、鹿城サクを投獄されて闇堕ちした五条シズクが不破ウシオに対してアプローチを掛けて二人が身体だけの関係になる予定だった。ウシオ・シズク・はつねの三角関係的な。その延長線上で、様々な立場の人間と関わることにより大瑠璃陛下を正義だと感じられなくなったウシオが大瑠璃陛下を裏切って大瑠璃陛下を刺し殺す展開も考えてた。もしくは、最初から不破ウシオが大瑠璃陛下を殺す雇われ暗殺者として入洛して、脈絡なく中盤過ぎに大瑠璃を刀で刺してアノハと対立する構造とか。観客も「ええっ!?」てなるような感じで。最後はウシオがアノハに殺されて終わるENDも考えたり。結局色々練り直して、それらは無くなったんですが。ちなみに飛良も離反して主人公側につく展開も考えたのですが、プロット改定で今の形に落ち着きました。あと、山科皇宮護衛官長が一度裏切った後、大瑠璃側に再度降り、その忠誠の証としてきらら皇女を子宮摘出のために捕らえるって展開も考えた。その後、子宮を取られたきらら(手術は別の人)が去るのを見送った後、後ろから鹿城サクに撃ち殺され「一度裏切ったものはどうであれ許さない」みたいな展開も考えてたけど、プロット改定で今の形に。あったかもしれない皇宮陰陽師アノハ。

・公演パンフレットにもちょっと書いたけど、そもそも最初は陰陽師少女アノハ』っていう現代風式神學園ラブコメになる予定だったんですよね。白虎と六合が普段は人間の姿してるけど実はアノハに使役される式神で、アノハは街の異変を式神を使って解決するとかいう…そういうカードキャプターさくら的なものになる予定だったんですけどね…蘆屋ホクトも女性でアノハの陰陽師ライバル兼恋のライバル的な感じの清楚で淑やかだけどやる時はやるで的な眼鏡キャラだったんですけどね…大瑠璃陛下とか朱鷺皇子とか存在してなくて、なんか寺の息子とか登場する、全然違った作品になる予定だったんですけど色々あって全部没!ボツ!没!すげー方向転換して『皇宮陰陽師アノハ』が生まれました。

・『皇宮陰陽師アノハ』での安倍アノハの性別は特に劇中で明言してません、お好きなように。

・作中で登場しなかった他の『十二天将』『十二悪鬼』もいずれ別の作品で出て来たら激熱だなと思う(セルフbot)もし朱雀とか玄武とか青龍とか登場したら「あっ白虎の仲間だ!」って思ってください。

・絶版した『學園使徒ノクト(2015年)』って作品から実は地味に「『条』の字一族という名家がある」って設定をたまーに使ってて、一条~九条まで居てそれらを治めるものを守条(かみじょう)という。って設定の元、今回は五条を登場させました。過去に守条・三条・九条を登場させてますが、三条以外絶版作品になってるので、今後また新たに登場させたいところ。

 

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以上!!

ここまで長々と読んで頂きありがとうございました。

自分としても、ようやくしっかりと文章が書けてよかったです。

 

これから12月中旬(予定)に劇場で注文した人に『皇宮陰陽師アノハ』DVD&Blu-rayが届いたり、その辺りでアノハ関連の物販も通販出来るように整備したりしようかなと思ってたり(予定)、そうこうしてるうちに次回本公演が動き出したりと、レティクル東京座は精力的に活動する予定です。

いっぱい楽しいことしような♂♂

 

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お客様からのお花や差し入れ等です!

うおおおお~~~~圧倒的感謝ァ……。皆様の応援のおかげで日々楽しく演劇やれてます!いつも応援ありがとうございます!

 

落ち込んだりもするけれど、私は元気です。みたいな。

頑張りたい、頑張りたい、みたいな気持ちを奮い立たせて、これからもレティクル東京座頑張ります。

 

改めまして

ご来場してくださったお客様、応援してくださったお客様、関係者の皆様、この度は誠にありがとうございました!

これからもよろしくお願いしまぁす!

 

 

近々色々なお仕事情報をまとめたいな~と思ってる赤星でした。

なお。